中ザワヒデキ『近代美術史テキスト』


中ザワヒデキ著『近代美術史テキストー印象派からポスト・へたうま・イラストレーションまでー』(トムズボックス刊)
は、1989年に発行されて以来、すでに20刷となるベストセラーなので、ご存知の方も多いかとは思いますが、少し内容の紹介をいたします。

A6判変型(150×105mm)、44ページというポケットサイズの本ですが、驚くことにテキスト、図版まですべてが中ザワヒデキの手書きからなる近代美術史です。扱う範囲は、1874年の印象派誕生から1980年代のイラストレーションの動向まで、約100年の近代美術史となっています。サイズ感や価格の安さ、中身の強烈なオリジナリティなどから、手にとればたいていの人が欲しくなる名著なのですが、WEBでどこまでその魅力が再現できるでしょうか。とにかく、少しだけ中身をお見せしましょう。

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本当に手のひらに載るようなサイズで、とても愛くるしいですね。表紙はピカソの「泣く女」(を中ザワさんが描いています)。タイトルも実に味があります。

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「近代美術史は、否、美術史は『印象派』に始まる」という言葉でこの本ははじまります。ふむふむ。

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後半では、話題のジェフ・クーンズもばっちり載っています(というか描いています)。章のタイトルは「第13章 シュミレーション100%:ジェフ・クーンの芸術?」ですが、考えてみると、「シュミレーション100%」のものをさらにシュミレートしているわけで、この本自体が実は中ザワヒデキの作品であるとも言えますね。ただの美術史の本と思ってもらっては困ります。

さて、中でも圧巻なのは、フォンタナの「空間概念」が説明される第8章でしょうか。

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フォンタナの制作風景を描いた3コマ漫画があるのですが、最終コマでは何と実際にカッターの切れ目が入っています。

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当然ですが、ページをめくった裏面、第9章イブ・クラインの箇所にも切れ目はありますね。

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驚くなかれ、さらにめくっていっても切れ目は続き、ハイレッドセンターの頭を切り裂き(写真)、この本では10章の「現在美術(1)」まで6ページ分も切れていました。

はじめて読む方は、「これ、切れすぎじゃない?」と思うらしいのですが、これは完全に著者の狙いがあってのことです。その狙いとは……。みなさん、ご想像ください。

最後になりましたが、すべて手書きという体裁のため、この本には書店流通に必須であるISBNコードやJANコードがありません。そのため一般書店では取り扱いが難しく、販売ルートが非常に限られたものになっております。ぜひこの機会にお求めくださいませ。


【仕様】
著者:中ザワヒデキ
書名:『近代美術史テキスト』印象派からポストへたうまイラストレーションまで
発行:トムズボックス
価格:500円+税
モノクロ、44ページ
サイズ:A6判変形(150×105mm)


【目次】

第1章 印象派
第2章 野獣主義と立体主義
第3章 ピカソ「ゲルニカ」とマチス「ナスターチウムの花と≪ダンス≫」
第4章 戦前期20世紀美術
第5章 「ダダ」とは お馬ドウドウの意味
第6章 戦後アメリカ美術の誕生
第7章 ジョーンズとジョーンズ以後
第8章 フォンタナ「空間概念」
第9章 イヴ・クラインと三木富雄の時代
第10章 現在美術 (その1)
第11章 現在美術 (その2)
第12章 ネオ・ジオの真意
第13章 シミュレーション100%:ジェフ・クーンの「芸術?」
第14章 ヘタうま・パルコ・反イラスト
第15章 スージィー甘金とイラストの心
アーティスト名索引